太陽光発電システムとの併用などで導入されることの多い家庭用蓄電池は消耗品といえ、やがて寿命がやってきます。その耐用年数はどれくらいなのでしょうか。また寿命を伸ばし、長く使うための方法はあるのでしょうか。蓄電池の寿命と長持ちさせるためのコツ、さらに間違った使い方などをお教えします。
耐用年数はどのくらい?家庭用蓄電池の寿命
家庭用蓄電池の寿命は充電サイクルの回数でよく表されます。サイクル回数は充電から放電までを1サイクルとし、何回このサイクルを繰り返すことができるのかを示すものです。充電量が0の状態から100%まで充電し、その電気を再び0%になるまで放電して使い切るまでが1サイクルです。
サイクル回数で表すことが多いのは、メーカーや製品特性、設置環境、利用方法などの諸条件によって寿命が変わるためです。
蓄電池にも種類がありますが、現在主流といえるリチウムイオン電池の場合は約4000サイクルが寿命と言われています。毎日使用するとして、耐用年数でいえばおよそ10年が一つの目安となるでしょう。ちなみに大容量の蓄電池ほど蓄えられる電力量が大きくなり、1回に充放電する時間が長くなるので、その分、耐用年数は長くなります。中には15年程度持つ製品もあります。
ただ、10年使用すると蓄電池として完全に使えなくなってしまうというわけではありません。蓄電池は使用を繰り返していると徐々に使用できる容量が減っていきます。10年経つと最初の頃のように100%の充電ができなくなるだけで、もともとの容量の何割か(70%程度が多い)は使用できます。これはスマートフォンなどのバッテリーと同じです。
また蓄電池自体の寿命が10年より長かったとしても、それ以外の電子部品や基盤が先に劣化してしまう可能性があります。他の部品が壊れてしまうことも含めて、寿命は約10年と考えておきましょう。
蓄電池の間違った使い方
スマホやノートパソコンのリチウムイオンバッテリーは、一度充電したら完全に使い切ってから再び充電した方がよい、という話を聞いたことがないでしょうか。その方がバッテリーの寿命が伸びる、継ぎ足し充電は劣化を早めるというのもよく耳にします。
しかし、これは正しくありません。まず、継ぎ足し充電が良くないというのは以前使われていたニッカドバッテリーやニッケル水素バッテリーでの話です。これらのタイプのバッテリーには、バッテリーを完全に使い切らず途中で再充電するとそのことを記憶し、次に使用した際に充電容量が十分にあっても放電電圧が低めになってしまう「メモリー効果」と呼ばれる現象が見られます。このメモリー効果で電圧低下が起きるとバッテリー容量が足りないと判定されるようになり、やがて機器が動作しなくなります。
ところが、リチウムイオンバッテリーではこのようなメモリー効果は起こらないので、継ぎ足し充電を意識する必要はありません。
このことはリチウムイオン蓄電池でも同じです。リチウムイオン蓄電池であれば継ぎ足し充電をしたとしてもまず問題はありません。逆に、蓄電池を使い切った状態で長期間放置すると過放電になるおそれがあります。過放電は急激な電圧降下を招き、蓄電機能を損なう原因となります。充電した電気を使い切るのは別に悪いことではありませんが、そのまま蓄電池を放置しておくのはNGということです。
蓄電池に充電した電気を使い切ったまま放置しておくのは間違った使い方です。気をつけましょう。
家庭用蓄電池を長く使うためのコツ
では、家庭用蓄電池の寿命を少しでも伸ばし、長く使い続けるにはどうすればいいのでしょうか。気をつけたいのは次の2点です。
過充電・過放電しない
過放電が蓄電池の劣化を早めるおそれがあることは上で述べました。同様に、100%充電された状態になっているのにさらに充電を続ける過充電も蓄電池に負荷を与え、劣化スピードを加速させてしまいます。過充電はそれだけではなく、蓄電池内部が高温になって危険性を高めることもあります。
高温になる場所に設置しない
家庭用蓄電池を劣化させるもう一つの大きな要因となるのが高温環境です。高温な状態で蓄電池を使用していると、リチウムイオンが減少して蓄電池の劣化が進みます。高温状態で充電まで行うと、さらにその状況が加速されます。
蓄電池の多くは屋外に設置しますが、その際も直射日光が当たるような場所は避け、家の北面や東西面が推奨されます。その他の条件もあるので、必ず信頼できる業者に設置を依頼してください。
家庭用蓄電池の寿命は約10年。メーカーの保証期間も10年ということが多いので、買い替えを考えるならその時期を目安に考えるといいでしょう。ただ、寿命が来てもすぐに使えなくなるわけではないので、なるべく長持ちさせる使い方を心がけるという方法もあります。日頃の使い方が寿命の長さを左右することを覚えておきましょう。