太陽光発電の普及とともに「ZEH(ゼッチ)」が話題を集めるようになってきました。ZEHについては、環境に優しい住宅であるということは何となくイメージすることはできるけれど、細かな定義までは分からないという方も多いようです。
今回は、国も積極的に導入を推奨している「ZEH」について、その定義やメリットを簡単に分かりやすく紹介していきます。
ZEHとは
料理をするとき、お風呂に入るとき、日が落ちてから電気をつけたり、スマホを充電したり…。私たちは日々の生活のなかでさまざまなエネルギーを消費しています。その消費量をさまざまな方法によってゼロにしようというのが「ZEH(ゼッチ)」です。
「ZEH(ゼッチ)」というのは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称で、簡単にいえば「省エネ住宅」を上回るより優れた住宅の概念を意味します。「ZEH」は国が積極的に推進している取り組みでもあるため、条件を満たしていれば補助金を受け取ることも可能です。では、具体的に「ZEH」とはどのような住宅を指すのかを見ていきましょう。主な定義としては、以下の3つが挙げられます。
省エネ
省エネというのは「エネルギー消費が少ない」ということ。具体的には、日々の生活で使用する冷暖房や給湯、電化製品などの消費エネルギーを抑えるという意味です。
例えば、電力消費量の大きい冷蔵庫やエアコンなどを購入する際にも、できるだけ省エネ対応のものを選ぶなどの工夫をして、消費エネルギーを削減します。気密性の高い窓サッシやドア、熱効率の高い給湯システムを導入も効果的です。「ZEH」では、空調、照明、給湯、換気の4つの機器で、一次消費エネルギーを従来よりも20%以上削減することを求めています。
創エネ
「創エネ」はその名の通り、「エネルギーをつくり出す」ということ。具体的には、太陽光発電システムなどを導入して、家庭で消費する電力を家庭で作り出します。日常のエネルギーをまかなうだけでなく、災害時のエネルギーの補充としても役立ちます。
断熱
壁や屋根など外気と接する部分に断熱材を施工することで、室内と室外の熱の移動を減らします。
上記の定義を満たすことによって、「作り出すエネルギーが消費エネルギーを上回る住宅」を目指します。断熱性能は「UA値(外皮平均熱貫流率)」という指標で表されていて、ZEHではUA値が0.4〜0.6(W/㎡k)以下であることを基準として定めています。
ZEHが注目されるわけ
日本政府は「2020年には新築住宅のうち半数程度がZEHになること」、「2030年には新築住宅のうちそのほとんどがZEHになること」という2つの目標を掲げていて、現状では補助金を支給するなどZEHの推進に力を入れています。なぜ日本政府がここまでZEHの普及に積極的なのかというと、その背景には日本が抱えている深刻なエネルギー問題が影響していると考えられています。
経済産業省によると2016年度の日本のエネルギー自給率は8.3%で、これは他のOECD(経済協力開発機構)諸国と比べて大幅に低い水準となります。これまで国内のエネルギー事情は比較的安定していると思われていましたが、2011年に東日本大震災が発生したことにより原子力発電所が停止した影響で、エネルギー供給が不安定化してしまいました。
現在、国内で消費されているエネルギーのうち全体の約15%が家庭での消費で、この数字は過去に起きた石油危機の際のおよそ2倍の消費量だといわれています。つまり、日本は現在深刻なエネルギー問題の渦中にいるといっても過言ではありません。
こうした背景が影響して、それぞれの家庭がエネルギー消費を見直し、省エネ化に取り組むことの重要性が改めて指摘されるようになったというわけです。
ZEHのメリット・デメリット
これから家を新築する場合、ZEHにすることでどのようなメリットとデメリットがあるのかを考えてみましょう。
まずメリットとしては、太陽光発電システムを導入し、家庭で発電した電力を自家消費することで、光熱費が抑えられるということが挙げられます。太陽光発電システムと蓄電池を併用すれば、日々の生活に必要な電力だけでなく、災害時の非常用電力を確保することも可能です。
また、断熱性を高めることで室内の温度を一定に保つことができるため、冬場の部屋ごとの温度差によって起こるヒートショックのリスクを軽減することもできます。ZEHの条件を満たしていれば補助金をもらうことも可能です。
設備を整えるための初期費用がかかること、維持費やリフォーム時の費用が高くなる可能性があることといったデメリットもありますが、省エネに特化したZEH住宅は一般的に住宅の資産価値も高くなるため、総合的に見ればメリットの方が大きいでしょう。
ZEHは光熱費の削減や住宅の資産価値向上だけでなく、地球に優しく健康にも優しいという長期的な面でのメリットもたくさんあります。マイホームを新築する際や改築する際には、ぜひ上記の内容を参考にした上で、ZEHの導入を検討してみてください。