2021年5月、「スマートスター」シリーズの新製品「スマートスター3」が発売されました。
スマートスター3は、太陽光発電をご自宅で使った分だけ環境価値のポイント化機能やEV充電機能等、脱炭素社会の実現に貢献するための各種新機能を搭載しています。
当製品販売開始を機に、「スマートスター」シリーズの開発経緯やスマートスター3誕生に至る道をご紹介し、蓄電池が実現していくだろう未来についてもお伝えしていきます。
停電への強さが評価された「スマートスター」シリーズ
「スマートスター」シリーズは、伊藤忠商事株式会社のブランドとして開発・販売している家庭用蓄電システムです。しかし商社である私たちが、このようにメーカーという立ち位置になることは、通常ではあり得ないとも言えるケースでした。
それを実行に移したのは、蓄電池に大きな可能性を見出していたからです。
販売開始前、蓄電池に必要な原材料の取り扱いはありましたが、蓄電池自体の需要が延びなければビジネスが拡大しないという問題にも苦しんでいました。そこで思い切って、川上と川下にまで手を広げようと決心し、川下の施策として家庭用蓄電システムである「スマートスター」シリーズが誕生したのです。
2017年の販売開始当初はまだ無名で、月数十台しか売れないような時代もありました。しかしそれから4年をかけて「スマートスターL」は累計43,000台以上を販売し、蓄電池の業界でトップクラスにまで登りつめることができました。
ここまで普及したのは、停電に不安を持つ方のニーズに、停電時に強い機能を有するスマートスターLが応えられたからだと考えています。
東日本大震災の発生により、直接的被害のあった地域以外でも計画停電が実施され、電気が使えるありがたさを身に染みて体験された方も多くいらっしゃったはずです。その後も自然災害は後を絶たず、いざというときの備えとして蓄電池は注目されました。
例えば「停電中でも温かいお風呂に入りたい」「暑さの厳しい夏はエアコンを使いたい」といったニーズがありますが、これまでの一般的な蓄電池では家の一部の電気しか使えず、200Vのエアコンだと使えないといった問題が発生します。しかしスマートスターLは200V出力が可能となっていて、家中の電気(もちろんエアコンも)が使えます。そういった停電時における強さは、高く評価いただいています。
参考)停電時におけるスマートスターLの稼働事例(2020年台風10号発生時)
※なお、停電時にもっと電池残量を残しておきたい、9.8kWhだとやや足りないことがあるといった声もあったため、スマートスター3では13kWhという大容量化も行っています。
卒FITによる自家消費需要増に対応したAIの導入
また、2019年から卒FIT(FIT制度による買取期間満了のこと)を迎える方が増えておりますが、卒FIT後を見据えた使い方についても模索しました。その結果2018年11月に登場したのが、「グリッドシェアサービス」と呼ばれるAIによる最適充放電サービスです。
家庭によって電気使用量や使用パターンは日によって異なり、太陽光発電ができる量は天候によって変わる中、翌日の天気や毎日の使用量を都度確認して蓄電池の充放電時間の設定をするのは大変面倒です。それを自動で行うのが、グリッドシェアサービスです。
グリッドシェアサービスでは、AIが日々の天気予報から太陽光発電の発電量を予測、ご家庭ごとに電気の使用量や使用パターンを学習します。FIT終了後は自家消費量が最大になるよう蓄電池の最適充放電をしてくれるのです。
「スマートスター3」は環境価値のポイント化を実現
停電への強さ、AIによる管理は、お客さまにとって大きなメリットとなりました。一方で、太陽光発電により生まれた電気を蓄電できる「スマートスター」シリーズは、脱炭素社会の実現に貢献できるという、環境面でのメリットもあります。
そこで新製品のスマートスター3では、利用者にも環境への貢献が見えるようにする、楽しめるようにすることを意識してデザインされました。
具体的には、蓄電システムを通じて家庭の環境価値(CO2を排出しないプラス面)を取り出す仕組みを構築しています。これは世界初の試みです。環境価値は脱炭素社会の実現を目指すパートナー企業に提供され、お客様に対しては価値に応じたポイント還元を行います。
自家消費した量の分、CO2 削減に貢献できているものとして、ポイント(グリッドシェアポイント)が得られるのです。貯まったポイントは、各種サービスの利用に使えたり、他のポイントに交換できたりします。
クリーンエネルギーでの走行を実現するEV充電機能
脱炭素社会実現への貢献につながるものとしてもう一つ、EV(電気自動車)充電の機能があります。スマートスター3においては、EV充電用コンセントを標準搭載しました。
スマートスター3に充電されたクリーンな電力を、200V出力という機能を活かすことで、EVやPHEV(プラグインハイブリッドカー)に充電できます。
EVは脱炭素社会の実現に必要とされ、自治体によっては購入にあたって補助金も支給されています。その市場はさらに拡大していくでしょう。
また環境省は、家庭や事業所等において「再エネ100%電力調達」すること等を要件とした、「電気自動車、プラグインハイブリッド車、燃料電池自動車」購入に対する補助金の支給も行っています(2021年5月現在)。
EVの利用だけでなく、EVに使う電力も再エネにすることで、さらなる環境への貢献につながることになるのです。
蓄電池がつくる未来とは
以上お伝えしてきたように、「スマートスター」シリーズは、停電への強さを発揮し、自家消費を最適化するAIを導入し、環境への貢献の見える化、EV充電対応など、家庭用蓄電池として画期的な取り組みを次々と実現してきました。
そしてさらなる未来も見据えています。
蓄電池の販売を通じて、脱炭素化に向けた分散型電源の普及や災害に強い地域づくりを後押しながら、そこから始まる、新しいサービスの展開も模索しています。
例えば電力個人間取引(P2P)。家庭用蓄電池に充電された電力は分散型エネルギーリソースとも呼ばれますが、その電力を個人と個人で取引するようなしくみの実現が今期待されており、「スマートスター」シリーズを元にしたサービス化も視野に入れています。
さらに、個人間だけでなく、個人と近くの店舗(コンビニ等)間での電力取引という可能性もあるでしょう。そうして、環境と経済がうまく循環していくシステムになるのが理想です。
スマートスター3の販売に合わせて開発した専用アプリ「蓄電池モニター」を開けば、こういった蓄電池の未来も見えてくるかもしれません。当アプリでは、いつでもどこでもエネルギー状況が確認でき、遠隔からでも蓄電システムの設定変更が可能です。
家庭用蓄電システムには、日本の電気のあり方をも変革していく可能性があります。災害、停電への備えとしてはもちろん、環境への貢献や、電気の新しい活用手段としても、「スマートスター」シリーズは活躍します。家庭用蓄電システムにご興味のある方は、新製品であるスマートスター3を含む「スマートスター」シリーズの導入を、ぜひご検討ください。
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