2022-04-28

千葉の大停電、「在宅避難」でどう乗り切った?(後編)

# 停電の注意点

吾輩はトラネコなり。
コタツは好きだが、日本の蒸し暑さにはそれほど強くないのだ。
エアコンは命綱。なのに、最近は停電のウワサをよく耳にするのだ。
なぜだ。なぜなのだ。飼い主はどうしたらいいのだ。誰か、誰か、教えてはくれまいか…。

ニュースや気象情報を見ながら「“数十年に一度”という言葉、毎年聞くなぁ…」と思っている人も多いのでは…?こうした大きな自然災害の後には停電が発生しやすいといわれています。さて、停電に対して私たちはどう備えるべきなのか、地域や研究機関などで活躍するキーマンに伺います。

南房総市大井地区区長 芳賀裕さん

今回は、2019年9月5日に発生した台風15号による停電が発生した千葉県南房総市大井地区(約110世帯250名)の芳賀裕地区長(通称 電力おじさん)に聞きました。
この後編では、各ご家庭で起こった困りごとや、芳賀さんたちが考える「家庭で行うべき災害への備え」についてご紹介します。

エアコン、冷蔵庫、トイレ…やっぱり使いたい

── 被災されたのは9月9日、残暑が厳しい時期だと思うのですが。

この地域は山間部で涼しく、夏は夜でもエアコンがいらないくらいなので、その点は大丈夫でした。ただ、他の地域の人からは「暑くてとにかく大変だった」という話を聞きました。冷房の心配をしなくてよかったのは有り難かったですね。

高齢者が多い地域なので、都会のような猛暑の中、エアコンや扇風機が使えないというのはとても危険です。

地域によっては、冬も大変なコトになるぞ!!!

災害対策本部の洗濯機はディーゼル発電機で動かした

トイレは難題なり。ネコは砂でいけるが、人間はそうはいくまいよ…

── 災害弱者かどうかの見極めはどのようにされたのですか?

我々は日頃から、「あそこのおばあちゃんは近頃少し元気がないね」といったように、全世帯の状況をつかんでいるんです。サポートが必要だと思われる家に、こちらから出かけていきました。

さまざまなサポートも

在宅避難には「家庭用蓄電池」も選択肢のひとつ

── 各家庭での停電への備えとしては、どんなことに取り組むべきだとお考えですか。

こうした地域には、災害弱者が多いんです。お年寄りや病人、それに障がいをお持ちの方。それに半数くらいの家で、犬や猫などのペットを飼っています。こうした人たちは、仮に避難所を開設しても、なかなか利用することが難しいのです。倒木等で道路が寸断されたので、物理的に避難所までたどり着けない人も多く出ました。

それに新型コロナウイルスのパンデミックに見舞われたことで、避難所に大勢の人が集まることは一層難しくなりました。

要するに、住宅が損壊するなどしない限りは、在宅避難が基本になるわけですね。つまり、数日間は自宅で過ごせる備えをしたり、環境を整える必要があります。

つまり…やっぱり災害には「在宅避難」の準備が必要で「在宅避難」の肝は電力ということだ…!

── 最近は、太陽光発電設備や大容量蓄電池を設置する人も増えています。

そうした設備があると、非常用電源として使えるので安心ですよね。電気を使用する医療機器を使用されていたり、熱帯魚を飼っている方などにもいいですね。

ただ、停電した場合、自立運転機能※2に切り替えないと電気が使えないという問題もあります。この地域が停電した時、自立運転に切り替えて電気を使えた人はほとんどいませんでした。切り替え方を知らない人や忘れてしまっている人が多いんですね。

── 「SmartStar」は、停電時には自動的に自立運転に切り替わる機能が搭載されています。また、自立運転に切り替えられた場合でも、普通は1.5kwまでしか発電できないようになっている蓄電池が多いのですが、「SmartStar」は独自のシステム制御により停電が起きた場合でも通常時と同様に太陽光発電を稼働させることが出来ます。

それなら安心です。昼間に蓄えた電気を夜も使えるわけですよね。冷蔵庫を始め、すべての電源を賄うことができるでしょう。

大容量蓄電池の場合、非常時への備えとしてだけ考えるとコストが大きいという問題もありますから、平時から使うことが前提になりますね。

非常用の電源としてどのようなものを用意するかは、「停電時に自分がどの製品を使いたいか」「そのために必要な電力量はどれくらいなのか」ということを把握し、検討しておく必要があります。

そんな便利な機能があるのか!
災害や突然の停電でパニくってたら、思い出すことも難しいはずだからな

── まずは、使いたい家電、必要な電力をシミュレーションしておくことが必要ということですね。

そうです。人・家庭によって必要な電力も変わってくるはずですから。

── 自宅に大容量蓄電池があると、地域防災への貢献にもつながりますか?

そうですね、ディーゼルの発電機等で提供出来る電力も、サポートするマンパワーも無限ではありません。

家庭用蓄電池で数日自立して生活できる家庭が増えれば、要支援の家の数が減ることになります。その分、限りあるサポート資源を他の家に回すことができます。また、電気が使えなくて困っている人を助けてあげることもできるでしょうから、地域にとっても頼もしいことだといえますね。

そもそも、全国的に避難所の収容人数は不足しています。「大災害時には役所が機能しない可能性がある」と認めている自治体もあります。そういう状況の中、大容量蓄電池は自助はもちろん、共助にもつながるのではないかと思います。

役所も大きな被害を受ければ機能するのは難しい、それは当然かもしれん…
災害の種類、レベルに応じて「在宅避難」の準備は本当に大切なり

芳賀さんと一緒に“地元”を守った方々の声

「みねおかいきいき館」スタッフ(左)高橋和也さん(右)松岡かづ子さん

「みねおかいきいき館」には業務用の大きな冷凍庫があるんですが、停電したまま放置しておくと、冷凍庫の中の食材を腐らせることになります。それで以前お世話になっていた市外のある施設にお願いして、ディーゼル発電機を借りてきたのです。発電機は燃料が切れたら止まってしまいますから、電気が復旧するまで、私は毎朝一番に発電機の軽油が切れていないかを確認し、減っていれば補充していました。停電から暮らしを守るためには、日頃から「もし災害が起きたらどうするか」を想像することが大切だと思います。(高橋さん)

停電中、私は毎日、地域の人々のために毎日お弁当をつくりにきていました。自宅のあるエリア(みねおかいきいき館から車で約20分)は2日で復旧したので、働きに来られたんです。電気って本当に大切なものだし、使えなくなると困るものだなぁと痛感しました。最近はお風呂に水を貯めたりするなど、日頃から防災対策を意識的にするようにしています。(松岡さん)


※2:「自立運転機能」
太陽光パネルが発電した電気を停電時でも自宅で使えるようにする機能。自立運転時の最大出力は1.5kW。

編集後記

インタビューを通じて、芳賀さんが何度も繰り返した「電気に依存した生活は急に変えられないんです」という言葉が印象的だったぞ。
いまや当たり前となった便利で快適な暮らしを維持するには、被災時にも電力を確保できる備えを持つことが欠かせないはず。
でも、そうした備えは日常から活用していないと、いざという時に「実は使えない状態だった」「正しい使い方が分からない」ということになりかねん!
家庭用蓄電池は日常の暮らしの中で活躍しつつ、非常時の電源としても暮らしを支えてくれる選択肢のひとつだな。