吾輩はトラネコなり。
コタツは好きだが、日本の蒸し暑さにはそれほど強くないのだ。
エアコンは命綱。
なのに、最近は停電のウワサをよく耳にするのだ。
なぜだ。なぜなのだ。飼い主はどうしたらいいのだ。
誰か、誰か、教えてはくれまいか…。
ニュースや気象情報を見ながら「“数十年に一度”という言葉、毎年聞くなぁ…」と思っている人も多いのでは…?こうした大きな自然災害の後には停電が発生しやすいといわれています。さて、停電に対して私たちはどう備えるべきなのか、地域や研究機関などで活躍するキーマンに伺います。
今回は、「防災のプロが『在宅避難の備え』教えます!」で登場いただいた今泉マユ子さんに続き、メディアでも活躍するこちらも「防災のプロ」、備え・防災アドバイザーの高荷智也さんに、防災力を高めるヒントをお伺いしました。
防災対策の基本は「命を守る準備~どうすれば家族全員が死なないか~」
──「防災のプロ」である高荷さんは、普段どんな防災対策をされていますか?
防災対策でいちばん重要なのは「命を守る準備」です。そのために、私はまず地震対策を徹底しました。今は地震にあってもつぶれない、耐震性などがしっかりした家に住んで、倒れてくると命に関わる大型家具などはすべて壁に固定しています。
備蓄品や防災リュックは命あってこそ役立つもの。ですから、ハザードマップ上安全な場所に建っている、かつ大地震で倒壊しない家(できれば耐震等級3)の家に住んでいれば、それで防災対策の半分はできていると言えます。
ただ、これだけでは地震以外の災害には備えられません。津波や洪水、土砂災害、地震火災などが起きたら、どんなに防災対策をした家でも、とどまっていると命に関わります。そこで、そうした災害にあう可能性が低い地域へ引っ越しました。
地震に強く、かつ地震以外の災害にあう可能性が低い家。この2つが我が家の防災対策の基本になっています。防災というと避難準備を思い浮かべる人も多いと思いますが、私の場合、「そもそも逃げなくていいように準備する」ことを心がけました。
避難所は、「自宅」に住めなくなった人優先なり。
多くの人は在宅避難になるはず。
千葉の大停電のコラムで芳賀さんも言っていたぞ。
──「在宅避難」を前提に対策されているのですね。高荷さんは以前監修いただいた「在宅避難と長期・大規模停電の防災対策実態調査」でもコメントで、多くの人が在宅避難を選択せざるを得ない状況について言及されていました。ご自宅にはどんなものを備蓄されていますか?
逃げなくていい家にしたとはいえ、想定外の災害が起きたら避難するかもしれないので、念のため家には防災リュックを1セット用意しています。さらに、外出先で災害にあう可能性も考えて、日頃から、いざというときに必要な防災グッズを通勤カバンに入れて持ち歩いています。
家の備蓄品は、ガス・水道・電気といったインフラが1週間止まっても普段と同じように過ごせる量を揃えています。我が家は同居の両親も含めて7人家族なので、7人分×7日分の量ということですね。
各種非常食に加えて、1人につき非常用トイレは1日5回分、飲料水は1日3リットル、そのほかカセットガスは全員分で100本以上を備蓄しています。また、停電しても家電が使えるよう屋根に太陽光パネルを設置し、複数のポータブル電源を準備してあります。
それとは別に、パンデミック等の食糧危機対策として、半年分以上の食糧も備蓄してあるんですよ。さすがに自宅に全部は置けないので、別途、こうした長期備蓄品を置くための家も借りています。ここは防災備蓄倉庫であり、私の職場であり、万が一自宅がつぶれたときに逃げ込む場でもあります。
ただし、これは我が家のケースなんです。大切なのは、「ウチの家族的にどうか」を考えることです。地盤等の土地柄、家族構成が異なりますよね。隣人や友人、遠方の親戚のマネがハマるとは限りません。「ウチ的在宅避難」のスタイルをイメージして、本当に必要なものを見極めることが大切です。
備蓄用の家…さすがプロよ…。
「ウチ的に~」ってよく聞くぞ。防災対策の場面でも使えるとは…!
イメージトレーニングで防災力アップ
──ご家庭で防災訓練などはされているのでしょうか。
子どもは学校の、私は自治体の防災訓練に定期的に参加しています。そのほか、私は時間があるときに、実際に防災リュックを背負って避難ルートを歩いてみたりしています。
防災リュックは購入しただけで安心してしまう人も少なくありませんが、実は落とし穴もあるんですよ。いざ避難しようとして背負ってみたら重すぎた、懐中電灯を使おうとしたら電池が切れていた、電池を変えようとしたらドライバーが必要だった──。
そんな目にあわないために、防災リュックを買ったら中身を全部確認して、きちんとセットアップしておいてほしいと思います。そしてぜひ一度、実際に背負って歩いてみてください。
──備蓄するだけでなく、いざというときのシミュレーションをしておくことも大事なのですね。
その通りです。避難ルートの確認も同じです。頻繁に確認するのは大変ですから、年に1度ぐらいと決めて、1年目は昼に、2年目は夜になどシチュエーションを変えながら歩くといいですね。道の安全性や照明の有無などがわかるので、いざというときにきっと役立つはずです。
そのほか、我が家では緊急地震速報の警報音が鳴ったら、子どもを机の下に潜らせるなどしてイメージトレーニングをさせています。何も起きなかったとしても訓練になりますし、実際に何か起きたら身を守ることにつながるのでおすすめです。
たしかに緊急地震速報に慣れてしまって、ただジッとしてしまうことが多い気がする。
実際に大きな地震が来た時に咄嗟に動けるようにイメージトレーニングするとは…ナイスアイディア!
──それなら特に肩肘張ることもなく、普段の生活の中で実行できそうですね。
大人の方も、例えば通勤中や運転中に「今この瞬間に揺れたらどう身を守るか」をイメージトレーニングしておくといいと思います。防災訓練というと大変そうですが、リュックを背負って避難ルートを歩いてみる、イメトレするといったことなら簡単にできますし、お金もかかりません(笑)。
ただ、そもそも我が家は災害時も普段通り暮らせる、特別な訓練をしなくてもそのまま暮らせるように準備した家。そのため防災も日常と言いますか、ライフスタイルそのものになっています。備蓄品も普段の食事などでどんどん使って、災害時の暮らしが「特別」ではなくなるように努めています。在宅避難は日常生活の延長にあるんです。
これまで色々教えてくれた人たちも言っていた。<>br 「防災だけ」では続かないって。本当にそうなんだなー。
後編に続きます