「V2H」は、車は移動のために利用するものであるという私たちの常識を変えました。V2Hには「クルマから家へ」という意味があり、電気自動車で蓄えたエネルギーを家庭で使う仕組みを指します。今回は、電気自動車の新たな可能性として注目の「V2H」について、その仕組みや活用のメリット・デメリットを詳しく解説していきます。
電気自動車の電気を家庭で使える「V2H」
「V2H」というのは「Vehicle to Home(クルマから家へ)」の略称で、その名の通り電気自動車で蓄えたエネルギーを家庭用の電力供給源として利用することを意味します。
従来の電気自動車(EV車)は、自宅に設置された100V/200Vのコンセントから充電するのが一般的でしたが、電気自動車から家庭で使用するための電力を得ることは不可能でした。
ところが、その後家庭用の充電スタンドが登場し、家庭で電気自動車に充電ができるだけでなく、電気自動車に蓄えた電力を家庭で使用することができる給電機能を備えた「V2H」も登場し、自動車の走行だけでなく家庭用電力までまかなえるようになったのです。
さらに近年では、蓄電機能を搭載した製品も生まれていて、昼間に太陽光発電で発電した電力を蓄えておき、夜間に利用することも可能になるなど、電力利用の幅は大きく広まっています。
V2Hの仕組み
V2Hはすべての電気自動車が対応しているわけではなく、利用するためにはV2H対応の電気自動車(プラグインハイブリットカーを含む)を導入する必要があります。また、V2Hは「Vehicle(クルマ)からHome(家)へ」という意味の通り、まずは電気自動車と家とが接続されなくてはいけません。
そこで必要になるのが電気自動車(EV)用のパワーコンディショナーです。EV用のパワーコンディショナーは、太陽光発電システムに搭載されているパワーコンディショナーと同様に、蓄電している直流電力を家庭で使用可能な交流電力に変換します。
V2Hを活用するメリット・デメリット
「走る蓄電池」と呼ばれるV2Hですが、活用することでどのようなメリットが得られるのか、デメリットと併せてそれぞれ詳しく見ていきましょう。
V2Hを活用するメリット
電気代の削減
昼間に車を利用する方の場合には、夜間に電気料金が安くなる夜間電力を利用することで、電気料金を抑えて充電をすることができます。また、日中自動車を利用しなかった場合には蓄えた電気を家庭用電源として使用することもできるため、大幅な電気料金の削減が期待できるというわけです。
災害時の停電対策にもなる
大型台風による大規模停電が多発する昨今では、V2Hを活用することによって停電時にバックアップ用電源として活用できることも注目されています。V2Hは蓄電池と同様に使うことができるため、万が一停電が起こった場合でも自動車に蓄えた電力を非常用電源として家庭で使用することができるので安心です。
しかも、V2Hは一般的な蓄電池と比べると電池容量が大きいため、停電時により長い時間電化製品を使うことができます。
補助金を受け取ることができる
電気自動車を購入する場合、自治体によっては補助金を受け取ることができます。車両本体はもちろん、V2H機器にも補助金を支給している自治体もあるため、購入を検討している場合には事前に確認をしておくと良いでしょう。
V2Hを活用するデメリット
初期費用がかかる
V2Hを使用する場合には、EV用パワーコンディショナーとV2H機が必要になります。その価格は機能によっても50万円〜300万円と大きな幅があり、またこの費用とは別に設置のための工事費用もかかります。家庭用蓄電池を購入する比較すると、初期費用の面で割高になってしまうのです。
V2Hは太陽光発電と相性がいい!
V2Hは太陽光発電との相性が良いため、相互にうまく連系することによって有効に活用することができます。
災害対策において、V2Hは非常用電源として役立ちます。大規模災害が発生して停電が発生すると、私たちの生活は大きな影響を受けてしまいます。V2Hと家庭用発電システムとを併用することによって、電力会社からの電力供給がストップした場合でも、昼間に太陽光発電で作りだしたエネルギーを大容量の電気自動車に蓄えておくことができるため、発電が行われない夜間でも電気を使うことができます。
V2Hと太陽光発電を併用は、家庭の経済面にもよい効果をもたらします。よりお得な電力プランと組み合わせることによって、電気料金の高い日中に電気自動車で蓄えた電力を使い電気代を削減することができます。
さらに注目したいのは、環境面の効果です。太陽光発電システムとV2Hを併用することによって、温室効果ガスや有害物質を含む排気ガスの削減につながります。家庭で作り出すエネルギーが消費するエネルギー量を上回る「ZEH(ゼロエネルギーハウス)」の実現も可能です。
V2Hを導入することで電気自動車(EV)を蓄電池として利用することができます。経済面でも環境面でも多くのメリットを得ることができるため、ぜひ上記の内容を参考にして導入を検討してみてください。